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響く、交わる、支え合う。服部龍生とMas Kogaの世界を訪ねて——南青山ZIMAGINE、15公演目の発見

響く、交わる、支え合う。服部龍生 × Mas Koga。南青山ZIMAGINE、2026年10月22日。二羽の鳥をモチーフにしたイメージバナー

どちらも主役で、どちらも相手を支えている。同じ二人の演奏を聴きに行ったはずなのに、また違う音楽に出会った。ツアー最終日、15公演目の南青山ZIMAGINEで、僕が持ち帰ったもの。

取材・文・写真:菅原 孝(BMマガジン編集部)
公演・取材日:2026年10月22日/会場:ZIMAGINE(東京・南青山)
出演:服部龍生(6弦フレットレスベース)、Mas Koga(管楽器)

前回の池袋Absolute Blue公演に続いて、服部龍生とMas Kogaのデュオを聴きに行った。今回は、全15公演のツアーを締めくくる最終日。会場は、南青山のライブスペース「ZIMAGINE(ジマジン)」だ。

店内は満員だった。見覚えのある顔も多く、ミュージシャンをはじめ、アーティストの方々も来ていた。僕自身はアーティストではない。それでも、こうした場所の雰囲気には、少しずつなじんできた気がする。

フルートのMas Kogaと6弦フレットレスベースの服部龍生、ZIMAGINEでの演奏
フルートのMas Kogaと、6弦フレットレスベースの服部龍生。2026年10月22日、ZIMAGINE。

同じ曲、同じ演奏順。それでも、毎回違う

楽器だけではない。ミキサーもスピーカーも車に積み、北陸から四国へ、そして東京へと戻ってきた。15公演を重ねながらの移動は、相当な疲れを伴うはずだ。

今回のツアーで僕が足を運べたのは、池袋と、この南青山の2公演だった。同じ楽曲が、同じ順番で演奏される。けれど、聴き終えた後に持ち帰る思いや感想は、毎回違う。

スポーツにも、そんなところがあるのだろう。たとえばゴルフで同じコースを回っても、その日にはその日の手応えがある。音や会場の響きが違うだけでなく、聴いている僕の感想も、前回とまったく同じにはならない。

開演の挨拶では、龍生の言葉がいつもよりテンポよく出てくるように感じた。疲れと、ここまでやり切ってきた思い。その両方が言葉になっているようにも、僕には聞こえた。

1曲目は、まだ耳が慣れていなかったのか、少し音量が大きく感じられた。それが2曲目、3曲目と聴き進めるうちに、いつも以上の心地よさへと変わっていく。音が、頭の中いっぱいに広がっていった。

気づけば前半が終わっていた。まだ聴き足りない。少しの休憩を挟んで、後半が始まった。

客席の後方から見た、満員のZIMAGINEとステージで演奏する二人
写真客席の後方から見渡した会場。僕は、この距離から二人の音を聴くのも好きだ。

二羽の鳥のように。主役と支え役が入れ替わる

後半は、最初から二人の奏でる音が一つになって聞こえてきた。

いつもは、龍生のベースの音を追っている時間が長い。ところが今回は、Masさんの音と溶け合い、想像以上に一つの音として耳に入ってくる。

Masさんはステージで、二羽の鳥が空中でじゃれ合っているような感覚を語っていた。それを聞いて、僕の中には二羽のハヤブサの姿が浮かんだ。それぞれが大きく飛び回り、ときどき空中で脚を触れ合わせるように交わって、また離れる。その動きが、何度も繰り返される。

そこで今度は、意識してベースの音だけを聴いてみた。すると、その音をMasさんの管楽器の音が、しっかりと支えている。

反対に、Masさんの音へ耳を向けてみる。今度は、龍生のベースが支えていた。

あれ? なんだ、この二人の音は……。一般にベースは、音楽の土台をつくる楽器だと認識している。もっとも、龍生のソロライブを聴いてきた僕は、それだけではないことも知っている。でも、この二人の奏でる音は、どちらもが主役なのだ。そして、どちらも相手を支え合っている。

何度か耳の向け方を変えて確かめたが、やはりそう聞こえる。しかも、気づけばMasさんの手にする楽器も替わっている。ソプラノサックス、フルート、尺八など、今回は合わせて5つの楽器を演奏していた。音色が変わるたび、二人の音の重なりに厚みが増し、その関係の見え方まで変わっていく。

録音や映像だけでは、僕にはここまでつかめなかったかもしれない。その場で音を浴びながら、耳を向ける音を変えてみる。ライブに足を運ぶ醍醐味を、あらためて味わった。

尺八を吹くMas Kogaと6弦フレットレスベースを奏でる服部龍生
写真尺八と6弦フレットレスベース。楽器が替わるたびに、二人の音の重なり方にも新しい表情が生まれる。

僕は比較的、後ろの方からステージを見渡すように聴くのが好きだ。一方で、顔なじみの常連さんの中には、いつも演奏者の近くを好む人もいる。今回も、演奏者から2メートルほどの場所に座っていた。

まさに、人それぞれ。この二人の音楽は、聴く人がそれぞれの思いを持ち帰れる音楽なのだと思う。

絵も音も、同じステージにある

今回のステージにも、龍生が描いた絵が置かれていた。椅子の上に載った一枚の絵が、二人の楽器の間にある。

前回の記事では、仏像を彫り、絵を描き、ベースを奏でる龍生の表現を紹介した。その絵が、今度は演奏と同じ空間にある。音を聴きながら絵に目を向けると、別々だったものが、同じ人の表現としてつながって感じられる。この絵も、今回のツアーを一緒に回ってきた相棒なのかもしれない。

開演前のステージ。中央の椅子の上に服部龍生の絵画が置かれ、左右に管楽器とベースが並ぶ
写真ステージ中央、椅子の上に置かれた絵は、服部龍生が描いた作品。開演前のZIMAGINE。

終演後、初めてゆっくり話したMas Koga

最後の曲が終わった。毎回思うことだが、二人はそのたびに、最高だと思えるステージを重ねていく。

演奏が変わっているのか、聴き手の僕がそう感じるようになっているのか、うまく切り分けることはできない。ただ、龍生も演奏する側の言葉で、同じような思いを語っていた。

今回は終演後の打ち上げにも誘っていただいた。片づけは手慣れたものだった。疲れは少しうかがえるものの、機材を収めていく手つきは、さすがに職人だ。同じ車に乗せてもらい、レストランへ向かった。

そこで、Masさんと初めてゆっくり話をした。それまでは、挨拶を交わす程度だった。

Masさんは現在、ニューヨークを拠点に活動している。今回の日本滞在では、このデュオ以外にも二つのバンドの演奏に参加し、熊本や仙台にも足を運ぶ予定だと聞いた。復興支援を通じてつながった縁があるという。そうした話を本人の声で聞くと、ステージ上の姿とはまた違った温かみが感じられた。

ZIMAGINEのステージでフルートを演奏するMas Koga
写真フルートを奏でるMas Koga。今回は、その音楽をもっと追いかけたいと思う夜にもなった。

公開されている公式プロフィールも読んでみた。Mas Koga(Masaru Koga)は千葉県生まれ。幼少期から複数の国で暮らし、11歳でトランペット、15歳でサックスを始めた。サンノゼ州立大学では「Improvised Music Studies(即興音楽研究)」を専攻し、1995年に学士号を取得している。尺八はMasayuki Kogaに師事したという。

以前、龍生のマネージャーから、Masさんは「アドリブを学ぶような専攻」で学んだのだと聞いたことがあった。その話が、公式略歴の言葉と結びついた。さまざまな音楽の伝統に触れてきた歩みを知ると、一つの楽器やジャンルには収まらない音の広がりにも、あらためて耳を傾けたくなった。

「自由に吹いてください」から始まった関係

打ち上げでは、二羽の鳥の話を、僕なりの言葉でも伝えてみた。400メートルリレーの、無駄のないバトンパスのようでもある。今思えば、バスケットボールで空中をつなぐ、息の合ったパスにも似ている。その感想を聞いたMasさんは、とても喜んでくれた。

そのとき僕は、演奏者の思いを受け取れていたのだと感じた。

龍生からは、知人の紹介で初めて一緒に演奏したとき、Masさんに「自由に吹いてください」と伝えたところから、付き合いが始まったと聞いた。

その出発点を想像する。相手が何を出してくるのかを受け止めながら、自分も全力で音を出す。掛け合いでもあり、助け合いでもあり、ときには戦いのようでもあったのかもしれない。

細かい言葉で決めきる前に、音で向き合った二人。そのやり取りが積み重なって、今の演奏があるのだろう。あくまで僕の想像だが、そう考えると、この先のデュオもますます楽しみになる。

次の機会は、来年、2027年の6月から7月ごろを考えていると聞いている。まだ構想の段階の話だが、それだけでも、また聴きに行きたくなっている。

6弦フレットレスベースを弾く服部龍生のステージでの姿
写真6弦フレットレスベースを奏でる服部龍生。相手の音を支えながら、自らも主役になる。

ZIMAGINE——南青山、骨董通り沿いの音楽空間

ZIMAGINEの店名が刻まれた壁とレンガに囲まれた入口
写真レンガに囲まれた入口と、壁に刻まれた店名。南青山・骨董通り沿いのライブスペース、ZIMAGINE。

今回の会場ZIMAGINEは、南青山の骨董通り沿いにあるライブスペース。外苑前で12年間営業した後、2017年4月に現在の場所へ移転した。その際、表記を「Z.IMAGINE」から「ZIMAGINE」へ改めている。読み方は「ジマジン」のままだ。運営会社・現音舎の移転案内

レンガと木を基調とした内装と音響設備を備え、音楽に限らず、さまざまな表現の場として案内されている。同じデュオでも、池袋のAbsolute Blueとは異なる空間で聴くと、耳に残るものが違う。その違いも、会場を訪ねる楽しみになった。

会場 live space ZIMAGINE(ジマジン)
所在地 東京都港区南青山6-2-13 ファイン青山B1
空間の特徴 レンガと木を基調とした内装。音楽をはじめ、さまざまな表現に使われるライブスペース
今回の公演 2026年10月22日「Ryusei & Mas DUO」/19時開演
今回の聴き方 後方から会場を見渡して鑑賞。前方で演奏者の近くに座る人も、それぞれの距離で音を楽しんでいた

会場情報:ZIMAGINE公式サイト/当日の出演・開演情報:2026年10月の公式スケジュール。

二人の音を聴いて、自分の仕事を思った

マネージャーは、音楽関係の来場者から今回の演奏を「完成している」と評価してもらったと、うれしそうに話していた。専門的なことは言えないが、僕も心からうなずける評価だった。確かにそう感じられる夜だった。

そして、二羽のハヤブサの姿は、自分の仕事にも重なって見えた。

同じ会社の人と進める仕事もあれば、違う会社の人と一緒につくる仕事もある。長く仕事を続けていると、「あのときは最高の仕事を一緒にできた」と思い出す相手や時間がある。

どちらか一人がずっと前に出るのではなく、相手が動けば自分が支え、自分が動くときには相手が支えてくれる。二人の演奏を聴くうちに、そんな仕事の手応えを思い出した。

もちろん、僕はステージの上で演奏したわけではない。それでも聴き手として、息が合い、互いの力が生きる時間の気持ちよさを、少し分けてもらえたように思う。

龍生の楽曲と演奏は、これからも聴き続けるだろう。そして今回は、もう一人、Mas Kogaというミュージシャンの音楽も、もっと追いかけたいと思うようになった。

この二人の、次のステージを楽しみにしている。

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